愛犬を大切に思うあまり、良かれと思ってやっていることが、実は犬にとってストレスになっている場合があります。しかも、嫌がられていることに飼い主自身が気づいていないケースが少なくありません。特別な問題行動をしている人の話ではなく、普段からしっかり愛情を注いでいる方ほど、無意識にやってしまっていることが多いのです。愛情と知識は別物。知らないまま続けていると、その子を困らせてしまう場面が出てきます。今回は、そんな7つの習慣と、明日から取り入れられる工夫を紹介します。
1. 頭をいきなり上から撫でること
犬に会うと、つい頭をポンポンと撫でたくなりますが、これは犬にとって怖い体験になっていることがあります。犬の視野は人間よりも横に広く、上からの視界は決して得意な範囲ではありません。上から手がぐっと近づいてくるのは、視界に入らないまま突然何かが迫ってくる感覚に近く、自然界で上から何かが迫るのは外敵に狙われる動きと同じであるため、本能的に「やばい」と感じやすいのです。これが積み重なると、触られること自体を嫌がるようになってしまう犬もいます。
おすすめは、まず手を差し出して犬が自分から近づいてくるのを確認してから、顎の下や喉元など下の方から撫でてあげること。正面からではなく、体の横からそっと近づくほうが、犬にとってはより安心できます。人と犬とでは体格差が大きいぶん、大きな手がわっと近づくことを脅威に感じやすい子も多いので、どこから手を持っていくかを少し意識するだけで、反応が変わってきます。
2. 目を合わせすぎる、じっと見つめること
アイコンタクトは犬と仲良くなれると言われますが、量や関係性によっては逆効果になることもあります。犬同士では、じっと見つめ合う行動が緊張や警戒につながることがあり、特に初対面の犬や関係性がまだ浅い相手にじっと見つめられると、プレッシャーを感じてしまいます。逆に、警戒心がないときはあえて視線をそらす、というのも犬同士のコミュニケーションの1つです。
一緒に暮らす飼い主との視線は、愛着が育ってからは安心感につながることも多いのですが、機嫌が悪いときやストレスを感じているときに正面からじっと見つめるのはプレッシャーになります。特に、叱っているときに「ちゃんと目を見なさい」と見つめ続けるのは、犬にとってはかなり怖い体験です。犬が目をそらす、あくびをする、口の周りをペロペロ舐めるといった仕草は、プレッシャーを感じているサインなので、気づいたら少し視線を外してあげましょう。
3. 抱っこしたまま下ろさないこと
抱っこが大好きな犬も多い一方で、抱っこが苦手な犬も少なくありません。おとなしく抱かれてくれるからといって、必ずしも好きとは限らないのです。犬は猫と違って、地面から離れることが得意な動物ではありません。猫の場合、子猫の頃に母猫に首をぐっと持ち上げられて移動しますが、犬の場合、子犬を運ぶときは母犬が鼻で転がして移動させるため、持ち上げられることに慣れていないのです。そのため、高いところに持ち上げられて逃げ場がない状態は、ストレスになりやすい体勢と言えます。
抱っこの中でジタバタするのは、下ろしてほしいというサインです。危ないからと強く抱えこんでしまう気持ちも分かりますが、逃げられない経験が積み重なると、抱っこされること自体を警戒するようになり、唸ったり噛んだりしてしまう子もいます。安全が確保できる状況であれば、嫌がる素振りを感じたら早めに下ろしてあげる、あるいは無理に持ち上げない工夫をしてあげましょう。
4. 声が大きい、動きが急すぎること
犬は人間が思っている以上に、音と動きに敏感な生き物です。犬の聴覚は人間の約4倍とも言われており、私たちが「ちょっと大きいかな」と感じる声でも、犬にとってはかなりのボリュームで届いています。大きな声で急に話しかけたり、それに合わせて手を急に伸ばしたりすると、犬はびっくりしてしまいます。玄関で帰ってきたときのテンションにも要注意で、飼い主が興奮気味に近づいていくと、犬も一緒に興奮し、それが積み重なると興奮しやすい性格になってしまうこともあります。
ゆっくり落ち着いたトーンで話しかけ、動きも急にならないよう意識するだけで、犬は「この人といると落ち着く」と感じてくれるようになります。犬に落ち着いてほしいと思うときは、まず飼い主自身が落ち着くことから始まります。飼い主がリラックスしているときのほうが、犬も安心して甘えてきやすくなるものです。
5. トイレの失敗を後から叱ること
トイレの失敗を見つけて、帰宅後に「なんでこんなことしたの」と叱ってしまう気持ちはよく分かりますが、これは犬には伝わっていません。犬の学習の仕組みでは、行動とその結果はほぼ同じ瞬間でなければ結びつかないことが分かっています。後から叱っても、犬にとっては「飼い主が帰ってきたら怒られた」という経験が積み重なるだけです。叱られたときにしょんぼりした顔をするのは、トイレの失敗を反省しているのではなく、飼い主のただならぬ様子を察して不安になっているだけ、というケースが多いのです。
これを繰り返すと、飼い主が帰ってきたときに緊張したり、隠れたりするようになってしまい、関係が良い方向には向かいません。トイレの失敗は見つけたら無言で片付け、正解したときにしっかり褒めてあげましょう。トイレの場所をある程度囲うなど、してほしい場所で成功しやすい環境を整えたうえで、うまくできたタイミングを褒めていくのが、根気はいりますが確実な方法です。
6. お散歩中に引っ張る度にリードを強く引き返すこと
お散歩中に犬がぐいぐい引っ張っていくのを直そうとして、リードを強く引き返す方をたまに見かけます。気持ちはよく分かりますが、タイミングや方法によっては、犬の首に負担をかけてしまうことがあります。特に首輪を使っているときにリードを強く引くと、瞬間的に大きな力がかかり、首輪の種類によってはぐっと締まるものもあります。これが繰り返されると、慢性的な首まわりのトラブルの原因になることもあり、散歩そのものに苦手意識を持ってしまう犬もいます。
引っ張り癖の対策としては、引っ張られたときに反発して引き返すのではなく、その場で立ち止まることが基本になります。場合によっては、引っ張りを制御しやすいハーネスに変えるのも効果的です。胸の前にリードをつけられるタイプなど、引っ張ると自然と飼い主の方を向くように作られたハーネスもあるので、その子に合ったグッズを探してみるのもおすすめです。
7. 愛犬のペースを無視して構うこと
これはもっとも気づきにくい習慣かもしれません。眠そうにしているのに遊ぼう遊ぼうと構ってしまう、痛そうにしているのにずっと抱きしめてしまう、逆に甘えてきているのに応えてあげられない、といったケースです。犬にも「今は1人にしてほしい」「今は構ってほしい」という意思があります。そのサインをキャッチできずにいると、犬は自分の気持ちが伝わらないと感じ、飼い主との距離を取るようになったり、逆に吠えて要求を強く伝えようとしたりすることがあります。
尻尾、耳、表情、体勢など、犬は日々たくさんのサインを出しています。それを細かく読み取り、今はそっとしておく、今は構ってあげる、を使い分けてあげることで、犬は「この人は自分のことを分かってくれている」と感じてくれるようになります。毎日一番近くで見ている飼い主だからこそ、その子のペースやサインを読み取る目線を大切にしたいですね。
今回紹介した7つは、どれも特別なことではなく、日常のふとした瞬間に起こりやすい習慣です。知っているかどうかで、日々の穏やかさが積み重なって変わっていきます。愛犬の尻尾や耳、表情をよく観察しながら、今日から少しずつ関わり方を見直してみてください。



